人の体は不思議!
受験生の皆さんこんにちは!ご存じの方も多いかもしれませんが、慈恵では2年生から本院の隣にある西新橋キャンパスで基礎医学を学び始めます!1年生のときの一般教養とは大きく異なる、初めて学ぶ医学。皆さんはその授業というと何を思い浮かべますか?解剖学や組織学を真っ先に思い浮かべた方は多いかと思います。その通りです!
2年生ではご本人様やご家族から提供していただいたご献体を用いて解剖と顕微鏡を用いた組織像の観察を行います。人体をマクロな視点とミクロの視点の両方で観察することで各臓器や組織が持つ働きを総合的に理解できるようになります。体中の様々な臓器を観察していくわけですが、私の中で特に印象に残っているのは脳の観察です。解剖実習で見た脳は想像以上に大きく、重く、緻密な内部構造を持っていました。先ず、表面は脳溝と呼ばれる溝が走っていて、脳のいたるところから脳神経が出ていました。実習を通じてその脳溝に従って脳が人体の運動に関わる部分や、聴覚に関わる部分など機能別に分けられていることを学びました。
組織実習では脳の立体構造が具体的にどのようにしてその機能に関係しているかを学ぶために、脳の切片を顕微鏡で観察します。そこで私は一次運動野という脳の領域にはBetzの巨大錐体細胞という特徴的な見た目の細胞があったり、私たちの記憶の処理に関わる海馬には渦状に配列されているニューロンの細胞体が見えたりと脳のミクロ構造について学びました。組織の観察は人体の機能に関して様々な問いや疑問を生じさせるいい機会です。例えば一次運動野の観察で見られるBetzの巨大錐体細胞はなぜ「巨大」なのでしょうか?その理由はその働きを知っていると推測できます。一次運動野は脳から数十センチ離れていく脊髄の中に神経軸索を出しています。ここまで長い軸索を生成し維持するためにはたくさんのタンパク質やエネルギーが必要になります。このタンパク質合成やエネルギー代謝を賄うために細胞体が大きくなったのではないかと予想できます。実際に調べてみたところ人間ではBetzの巨大錐体細胞の細胞体の大きさは軸索の長さと比例するそうです(“Correlation of neuronal cell body size in motor cortex and hippocampus with body height, body weight, and axonal length”,Ho et al.,1992)。
マクロとミクロ、この二つの視点を持って人体を観察するとその人体の機能や役割にも考えを巡らせ、その理解へと繋がります。どうかこの記事を読んでくださっている皆さんにも人体の神秘性とそれを持つ人の尊さについて実感していただきたいです。