研究室配属で繋がった医学と工学
慈恵には3年次のカリキュラムに研究室配属があり、全員がそれぞれの研究室に配属された後、2ヶ月にわたって研究を行います。臨床医学、基礎医学合わせて50程度の研究室があり、学生は興味のある研究室を選ぶことができます。研究室配属期間は授業が少ないため、発表に向けて自分のペースで自由に研究を進めることができます。本記事を通じて、少しでも慈恵医大での研究室配属がどのようなものか、そしてどんな研究が行われているのかを知ってもらえたら嬉しいです!
私は医用エンジニアリング研究部にて「合成高分子に対する免疫反応」の研究を行いました。医用工学を専門に扱う、慈恵でも数少ない工学寄りの研究室です。生体に応用できる高分子を用いて、臨床現場での薬物治療や画像診断に応用するための研究が進められています。この研究室には医用高分子分野の第一人者の先生方が多数所属しており、世界でも最先端の研究が日々行われています。学生も先生方の指導のもとで、幅広いテーマに取り組むことができる環境でした。
ここで私が行ったのは、「合成高分子に対する免疫反応」に関する研究です。先生方からご助言をいただき、ポリエチレングリコール(PEG)という高分子に注目しました。PEGは毒性が低く安全性が高いため、mRNAワクチンや医薬品、化粧品、潤滑剤、洗剤など、分子量に応じて様々な用途で使われています。私たちの生活の中でも、実は非常に身近な物質です。PEGは長年「生体親和性が高く、免疫反応を起こさない」とされてきました。ところが、近年の研究で、PEGをタンパク質や脂質に付加した状態で体内に入れると、PEGそのものに対する抗体(抗PEG抗体)が産生されることが明らかになってきたのです。
この抗PEG抗体は、実際にCOVID-19 mRNAワクチン接種後に見られたアナフィラキシー反応にも関与している可能性が指摘されています。つまり、安全だと思われていたPEGが、特定の条件では免疫反応を引き起こすということです。
私はこの点に着目し、市販のインフルエンザ抗原検査のように、誰でも簡単に抗体の有無を確認できる仕組みを作れないかと抗PEG抗体検出キットの作成を目標に複数の実験を行いました。研究室配属期間内に実用化することは叶いませんでしたが、試薬の調整や抗体反応の観察など基礎的な実験を進めていき、最終的には検出に使う粒子の種類、大きさや希釈倍率、検出抗体のタイプを決定することができました。研究室配属以前は「難しそう」「自分には向いていない」と漠然と感じ、研究を避けていました。しかし先生方が学生のレベルに合わせて一から丁寧に教えてくださり、細かく目標を設定してくださったおかげで、少しずつ実験や分析、考察に慣れることができました。実験が思うようにいかない日もありましたが、今から振り返ると先生方に恵まれ、とても楽しい2ヶ月を送ることができたと感じます。ぜひ慈恵に入学された際には、この研究室配属期間を楽しんでくださいね!