臨床の現場で学ぶ、医師としての第一歩

慈恵医大のポリクリ(全科臨床実習)は、医師としての第一歩を踏み出す重要な1年間です。これまで講義や実習で学んだ知識を、実際の医療現場でどのように活かすのかを体験しながら、患者さんに寄り添う医療を身につけていきます。ポリクリは、5年生の9月から翌年7月までの約10か月間、36週間にわたって行われます。臨床実習を始めるには、まず全国共通試験であるCBT(Computer Based Testing)とOSCE(Objective Structured Clinical Examination)に合格する必要があります。CBTはパソコンを使った知識試験、OSCEは診察や説明などの技能を評価する実技試験で、これらを通じて臨床に出る準備が整ったことが確認されます。

実習は3人1チームで回ることが基本ですが、診療科によっては2チーム合同で6人になることもあります。慈恵のポリクリでは、すべての診療科を順番に回るのが特徴です。内科は8診療科をそれぞれ2週間ずつ、一般外科(血管外科、上部・下部消化管外科、肝胆膵外科、乳腺外科、小児外科を含む)は計2週間、小児科は2週間、その他の診療科(産婦人科、整形外科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科、精神科など)は各1週間で実習します。1年間を通して幅広い分野を経験することで、将来の進路選択にもつながる貴重な学びが得られます。実際の実習では、病棟や外来で問診・診察を行い、カルテに記録を残したり、症例をまとめて発表したりします。静脈採血、注射、心電図や超音波検査、縫合など、医師に必要な基本的手技も実際に体験します。患者さんへの対応の仕方や、医療チームの一員としての立ち振る舞いも学ぶことができ、知識だけでなく態度や考え方も大きく成長していく時期です。

慈恵のポリクリの特徴は、全診療科を網羅する「広さ」と、少人数で行われる「深い学び」にあります。学生一人ひとりがチームの一員として医療現場に参加し、医師や看護師、薬剤師など多職種と連携しながら診療を経験します。指導医の先生方から直接フィードバックをいただける機会も多く、実践的に学べる環境が整っています。5年次のポリクリが全科を幅広く経験する期間であるのに対し、6年次のクリクラ(選択臨床実習)では、自分の興味のある診療科を選び、より専門的に学びを深めます。ポリクリで医療の全体像を掴み、クリクラで自分の目指す医師像を固めていくという流れです。

初めて患者さんと向き合う緊張や戸惑いもありますが、現場での経験を重ねるうちに、知識が「人を診る力」としてつながっていく実感が得られます。チーム医療の中での責任や協調、そして患者さんの人生に寄り添う姿勢を学ぶことができるのが、慈恵のポリクリです。机の上の勉強では得られない、人としての成長と医の原点がここにあります。