脳の仕組みを解明しませんか?~神経科学研究部~
私はユニット「医学研究」を履修して神経科学研究部でお世話になっています。この記事を読んでいる読者の皆様はそもそもユニット「医学研究」が慈恵のカリキュラムの中でどのような位置づけかご存じでしょうか?念のために説明すると、このユニットは必須科目ではなく選択科目なので、履修せずに卒業して医師になることはできます。しかしながら、個人的にこのユニットは履修しない理由が思いつかないほど有意義なユニットだと思うので、なぜ私がそう思うのかをお伝えしたいです。この記事では研究室に参加することの利点について厳選した2つと研究室でどのような研究が行われているかを述べたいと思います。
研究室に参加するべき理由の1つ目は学年・大学の垣根を超えた意欲のある方々と大学の授業+αの学習ができることです。他の研究室でも同じようなことが行われているかは残念ながら分からないのですが、少なくとも私が参加している研究室では教授が指定した参考書を使って輪読会が行われています。輪読会には慈恵2年の私以外に慈恵の後輩や大学院生、東京理科大学の学部生、大学院生が参加しています。自分の大学の同期以外と学習する機会はなかなか無いのでいつも良い刺激をもらっています。教授や大学院生の先輩方から有益な情報をもらえることはもちろんのこと、他の大学学部学科の方から医学生では持ちにくい視点を提示されたり、後輩からも自分の持っていないかった疑問・考え方を教えてもらったりするので非常に有意義な経験をさせてもらっています。また、時には高校生が輪読会を聞きに来ることもあるので不甲斐ない姿を見せないよう、いつも以上に緊張感を持つこともあります(笑)。
2つ目の利点は何と言っても実験の手技を実践できる点です。言葉にするのは難しいですが、単純に手技は楽しいです(笑)。もちろん机に向かって勉強するだけでも楽しい時はありますが、ずっと机に向かっていると飽きてしまいます(※そんなことを言ってもいられない時もあります)。勉強に飽きた時に実験をしてうまくいけば、勉強のモチベーションにもつながるのでお勧めです。また、今まではデータを提供されっぱなしで自分からデータを得ることはほとんどありませんでしたが、新しい発見をするためには自分からデータを取る必要があるのではないかと思ってきたので、その点でも実験の手技を身につけることは大事だと思います。
最後に、神経科学研究部でどのような研究が行われているかを紹介したいと思います。感覚器で刺激を受容して生成されたシグナルが脳へ運ばれる時、基本的に複数の神経を介してシグナルが運ばれます。この途中の神経細胞に遺伝子の変異を起こすことで生体にどのような変化が起こるのかを観察し、その神経回路の意味や他の神経回路との連関について解明するという試みが研究室で行われています。ここで、神経細胞に遺伝子の変異を引き起こすことについて深掘ります。遺伝子の変異を引き起こす方法としてウイルスを使うというものがあります。標的となる細胞の近くにウイルスを打って感染させるのです。ウイルスを打つと言っても簡単ではありません。何度か「ビーズ」を試しに注入してどの座標で打てば標的の細胞があるあたりに打ち込めるかを最初に調べます(「ビーズ」と言うのは特定の光を当てると励起して光を返してくれる特別なビーズです)。そうして試し打ちをしたのが添付した写真です。こちらは脳幹の橋の部分を通るように腹側から背側の方向に切った断面です。写真の右下部分が橋の中にある橋核と呼ばれる部分で、今回橋核にある神経細胞を標的にしていたのでちょうど赤色にビーズが光っており適切な座標で打ち込めていることが分かります。
この画像はうまくいった時のものを提示していますが、もちろんうまくいかないときも何度かあります。ですが、うまくいかない時があるからこそ、うまくいったときはとてつもない達成感があります。以上の内容から少しでも研究に興味を持っていただけたならば幸いです。
脳幹の橋の部分を通るように腹側から背側の方向に切った断面。写真右下の橋核に注入されたビーズが赤く光っている。