どうして医学部で死について勉強するの?

「死亡推定時刻」という言葉を、ドラマや漫画で見聞きしたことはありますか? ミステリーやサスペンスの舞台装置として周知されている「法医学」ですが、これらはフィクショナルなものではありません。法医学は、「死亡時刻の推定や死因の解明」、「法律上の死にまつわる解釈」など、死体や制度上の死にまつわる現象を科学や法律の視座から考える学問です。私が法医学という学問を初めて知ったのは、医学部入学前、監察医の上野正彦先生の著書を読んだときでした。高校生の時分は、ミステリー的な興味から読み進めていましたが、愛読書として手元におきながら、そこに書かれているのは人の死をめぐる科学と法律、そして社会の関係であるのだと、大学で医学を学びながら考えるようになりました。「死とは何か」「なぜ人は亡くなるのか」「死をどう扱うべきか」という問いへの誠実な探究がそこにはありました。

医師は、人の生命や身体に包括的に触れる職業です。その職能は生きている人だけに限らず、亡くなった後の人権にも及びます。死後、人間はどう変化していくのか、どのように記録されていくのか、そしてどのように弔われていくのか。法医学は、「死を通して生命を捉える学問」であり、医師の社会的責任を最も根源的な形で問う分野だと思います。

また、「死とは何か」と突き詰めていくと、それは一方で生理現象や物理現象としての科学の問題であり、もう一方で法制度によって定義される社会的概念でもあります。例えば脳死のように、「生命の終わり」にまつわる話題も、法医学の領分です。慈恵医大は、日本で最も法医解剖件数の多い大学の一つです。慈恵第三病院の法医解剖室では、東京都多摩地区の法医解剖を担当し、年間最多レベルの実績を誇ります。最新のCTを用いた死後画像診断(実習で本物を見られます!)など、実際の現場を反映した教育環境が整備されています!

慈恵医大の法医学講義は、3年生の後期に行われます。国領校での解剖学実習では、司法解剖や監察解剖を見学させてもらえたり、実際の症例をもとに死因や死亡時刻を推定するグループワークがあったりなど、かなり詳しく法医学について学ぶことができます!慈恵医大で、医学の眼から、死について深く考えてみませんか。