先輩から後輩へ、受け継がれる「慈恵らしさ」
「皆さんは慈恵医大の宝です。」4年前の春、入学式にて当時新入生であった私たちに、学長先生はこのようにお話いただきました。この言葉の意味が、約5年間の慈恵医大生としての生活を経て、だんだんと分かってきた気がします。
本学は、医学科は一学年につきおよそ110名の学生が在籍しており、総合大学と比較すると全体として少人数規模であると言えます。少人数だからこそ、学年の垣根を越えて、楽しいときは大いに盛り上がり、試験前の辛い時期にはお互いを励まし合う。課外活動に対しても常に真剣で、そこで得た繋がりは自分自身の心の支えとなります。慈恵オリジナルのイベントも多く、楽しかった経験も、辛かった経験も、すべて慈恵生ならではの経験として積み重ねられていきます。
「病気を診ずして病人を診よ」を建学の精神としたカリキュラムの一環として、低学年の頃から、様々な医療施設訪問や他職種の方々にお話を伺う機会が数多くあります。自分の目で見て学ぶことで「社会において医師がどのような役割を担うのか」を考える経験は、特に臨床の場において確かな強みになるのではと感じています。また、学びを支える先生方と学生の距離の近さも、慈恵の最も誇るべき魅力の一つであると考えています。学生が行き詰まったとき、あるいは自分自身で何かに挑戦したいと思ったとき、慈恵の先生方は全力で学生に向き合い、学生が成長する可能性を最大限に広げていただいていると感じています。私自身も先生方にご相談したことがきっかけで、現在、医学研究にも挑戦しています。
4年次より臨床実習を行っているなかで、改めて気づかされたことがあります。それは、慈恵医大の素晴らしさは、「先輩方が後輩にとっての道しるべとなる」ことにあるということです。現在、日々の臨床実習にて、以前学生時代に部活動や委員会活動などにおいてお世話になった先輩方が、病棟で、手術室で、論文や学会発表で、それぞれに活躍されている姿をたくさん目にします。学生時代に身近に感じていた先輩方が、現在は医師として勤務され困難な状況にも果敢に立ち向かっていらっしゃいます。医師を志す学生として、そして先輩方にたくさんお世話になった後輩の一人として、憧れを抱かずにはいられません。時にはその存在に圧倒されてしまうこともありますが、久しぶりにお話をすると、すぐに以前の先輩―後輩の関係に戻り、変わらない関係性に安堵すると同時に、改めてその魅力を感じます。多くの卒業生が慈恵医大で働いていらっしゃり、新しい慈恵を作るべく奮闘されている姿を見て、自分も安心してここで医学を学んでいこうと思わせてくれる、そんな素敵な環境が本学にはあります。
都心の真ん中に位置する本院も改修工事を経て新しく生まれ変わり、そこで学ぶ私たち学生も、常に進化していくカリキュラムのもとで日々研鑽を積んでいます。長く受け継がれてきた「慈恵らしさ」を素敵な先輩方から学び、教職員の方々の支えによって自分自身が大きく成長し、そしてそれをまた後輩に伝えていきたいと自然に思える。学生が「宝」として一人ひとり大切にされ慈恵を作っていくという意味が、分かってきたように思います。
(医学科5年 横田昂子)