《小坂瑠依》慈恵再受験生のリアル

再受験生は高卒生と比べて経歴も目標も多様だろう。だから、私の経験が慈恵に通う一般的な再受験生の形だとは言えない。しかし、今、再受験をしようと考えている人の一つの参考になればと考え、私なりに『受験生』時代と慈恵での2年弱を振り返ってみた。

私は高校一年生の時、当時通っていた高校の留学制度を利用して渡米し、そのまま高校と一度目の大学をアメリカで卒業した。大学は教養を学ぶことを目的としたリベラルアーツ大学で経済学を専攻し、その後外資系コンサルティング企業の東京支社で1年半ほど働いたところで再受験を決意した。多くの見えない人や物に影響を与えるビジネスの世界より、一人一人と向き合うことができる医療の世界のほうが自分にはあっていると考えたからだ。

受験の前年の8月に会社を辞め予備校探しを始めた。ウェブサイトで自分の信念にあう予備校を探して見学に行ったが、「今年度中の受験は難しい」と入塾を断られることもあった。10月のマーク模試で偏差値40台の科目もあり、全ての医学部がE判定だったのだから無理もないだろう。幸いにも私の力を信じて「一緒に合格を目指そう!」といってくれた個別指導の予備校が見つかり、9月から本格的に受験勉強を始めた。数学は週2回、物理と化学は週190分の授業を受け、それ以外の時間は一人で勉強をした。各教科の先生に選んでいただいた問題集をひたすら解いた。物理と化学は問題集を一通り終えた後、過去問を数年分ずつ解いたが、数学は問題集がメインで過去問はほとんど解かなかった。範囲を一通り学習するのが精一杯で、過去問まで至らなかったというのが正直なところだ。受験校を決める時期となったが、10月のマーク模試以外は模試も受けておらず、自分の実力がわからない。だから、関東近郊の共学私立医大を片っ端から受けてみた。蓋を開けてみたら、補欠だが慈恵に合格していたのである。

慈恵はほとんどの学生が現役または一浪である。再受験生でも免除になる科目はほとんどなく、高卒生と同じように教養の授業から受講しなければならない。正直、再受験生の多い大学のほうが居心地が良く、融通も利くのではないかと思うことも多々ある。一方で、目的を持った学生をサポートしてくれる環境が整っているのもまたこの大学の特徴だと思う。私自身は、思春期の精神医学に興味があり、最近は精神科領域に関連する研究に多くの時間を費やしている。研究室の先生方は、突然研究室のドアをたたいた私のことを温かく迎え入れ、一から熱心に指導してくださる。高卒生であろうが、再受験生であろうが、この大学の先生方はやる気のある学生をサポートしてくださる。

私自身まだまだ未熟だが、再受験を考える人に3つのアドバイスを送りたい。まず、時間の限られた再受験生には、自分が信じられる塾や先生、勉強法を見つけてほしい。一見遠回りに思えるが、勉強を始める前にそこに時間をかけることが、その後の勉強効率にとても大きな影響を与えると思う。2つ目に、できることをやり切ったら、とにかく怖がらずに挑戦してみてほしい。私のように何が起こるかわからない。最後に、もし複数の医学部に合格したのなら、もう一度自分が医学部で何を得たいのかを考えてほしい。そして、偏差値ではなく、自分の目的が果たせる大学を選択してほしい。それは、経験が豊富で、目標が明確な再受験生の特権だと思う。一人でも多くの再受験生に慈恵で出会えるのを楽しみにしている。

(医学科2年 小坂瑠依)