《本橋沙耶》臨床実習で学んだ「病気を診ずして病人を診よ」

5年生の学生生活は、大学病院や関連病院での臨床実習がメインとなります。5年生の7月までの全科臨床実習では、ほぼ全ての診療科をそれぞれ12週間かけて回り、各科の内容について広く学びます。一方9月からの診療参加型臨床実習では、1ヶ月主治医チームの一員として患者さんと接し、時には採血などの手技も行い、より実際の診療に携わっていきます。今まで座学で学んできた内容を現場で活用して患者さんの病状について考え、チームの先生方と共に話し合い、治療に移すというプロセスを、学生のうちにたくさん経験させていただけることはとても恵まれていると感じます。また、その治療により患者さんの病状が改善していくのを見ると、自分のことのように嬉しく思います。

私はこれまでの診療参加型臨床実習で、小児科、腎臓内科、救急科をローテートしました。臨床実習では、知識面で座学よりも深く、より実戦的な内容を学ぶことができます。特に、経験した症例に関する内容はとても印象に残り、その後の学習や臨床実習に活かすことができていると感じます。しかし、臨床実習で学べることは知識だけではありません。患者さんやご家族に寄り添うこと、まさに「病気を診ずして病人を診よ」の精神を実感することが何度もありました。特に印象的だったのは、腎臓内科のある患者さんのことです。その患者さんは、容態が安定せず、意識が良くなったり悪くなったりしており、ICUの入退室を繰り返していました。しかし、意識がはっきりしている時には、早く治して仕事に復帰したいと話していらっしゃり、ご家族もそれを望まれていました。その患者さんの今後の方針をチームで話し合っていた際に、主治医の先生から意見を求められました。その時、患者さんの検査上の数値や意識レベルに気を取られがちな、「病気ばかり診ている」自分に気づきました。そして、患者さんやご家族の想いを受け止めてそこに寄り添う、「病人を診る」医療を提供することの難しさを改めて感じました。

慈恵医大では、先生方から折に触れて、自分なりに「病気を診ずして病人を診よ」の意味を考えてみてほしい、とのお話があります。私は、この経験を通じ、患者さんとご家族からその意味の一つを教えていただいたように思います。私は将来、内科医として患者さんやご家族を支えていきたいと考えています。内科では、長年に渡って患者さんやご家族と向き合っていくことが必要だと思います。私の目標は、患者さんやご家族から率直な想いをお話ししてもらえるような信頼関係を築き、それをしっかり受け止めて寄り添うことのできる医師になることです。

慈恵医大は、そんなロールモデルとなる先生方がたくさんいらっしゃる、素晴らしい環境だと思います。皆さんと慈恵医大でお会いできることを楽しみにしています。

(医学科5年 本橋沙耶)