医学部の講義は暗記だけ?

医学部の勉強は暗記ばかりで大変そう、と思っている方も多いと思います。確かに覚えないといけなければならないことは沢山あります。しかし、全ての科目が暗記だらけかというとそうでもありません。

今回、名物講義として取り上げさせて頂く講義は「自然と生命の理」という講義です。2年生の前期に受ける講義になります。名前からはどのような講義かなかなか想像し難いかもしれません。この講義は医学部でよく聞く科目としては生理学の講義になります。生理学と言われてイメージが湧く方もいれば全く何のことやらという方もいると思います。簡単に説明すると、人間の体の中で起こっていることを、科学を用いて説明しようとする学問になります。数理科学を人体に適応させることにイメージが湧きにくいかもしれません。心臓を例に少し考えてみましょう。生まれてから死ぬまで常に動き続けてくれる心臓ですが、どのようにして動いているのでしょうか。詳しいことは医学部の授業にお任せしますが、電気が関わっていることがポイントになります。最近駅などでも良く目にするようになったAEDという機械は電気ショックで心臓の電気活動を正常に戻す機械になります。心電図という機械も「電」という文字が入っているように、心臓の電気活動を計測する機械になります。電気が関わっているということは物理学が関与してきそうですね。人間の体は想像以上に科学が関与しているのです。

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名物講義として選んだ理由は二点あります。一点目は、学生同士が考えることを重視した講義である点です。講義と聞くと、教師から一方的に説明を受け、学生はそれを受動的に聞く形態が一般的かもしれません。確かに、初学者に対して必要な知識を説明してもらうことは必要でしょう。しかし、一方的に聞いているだけで、習った知識を利用する練習をしないと使える知識にはならないでしょう。「自然と生命の理」では、必要事項を説明してもらいながら、学生同士で疑問点を考えたり、質問しあったりする時間が設けられています。また、講義だけではなく、演習という授業も設けられています。演習では、学生だけで与えられた問題について考え、答えを出します。講義で習ったことを参考にしながら、実際に自分で考えて、習ったことを使用する機会も設けられているのです。私自身も講義で分かりにくかった部分が、演習を行うことで、このように利用するのかと納得することが何度もありました。

二つ目としては、入試の選択科目に配慮している点です。入試で物理を選択した学生にとっては電流や力の考え方は馴染みのあるものだと思いますが、生物を選択した学生にとってはなかなかとっつき難いでしょう。先生方もそれは重々承知であるため、物理選択と生物選択で授業が分かれています。また、物理学や数学を使って考える学問なため、個人によって分かり難い部分があるのは事実です。このため、質問もしやすくなっています。講義の際も学生同士が考える時間には先生が教室をうろうろし、気軽に質問をすることができます。また、授業を担当される先生方の研究室でもすぐに質問をすることができます。

このようにして、知識を基に考える力を育む講義が「自然と生命の理」になります。

(医学科4年 江口昌典)