慈恵の名物講義 〜基礎医学編(2年生)〜

受験生の皆様、こんにちは。  

1年生は国領にて、人文社会や物理学も含め幅広い教養科目を学びます。2年生になると新橋でいよいよ基礎医学が始まります。今回は、その中で私が最も印象に残っている科目を2つご紹介します。

① 2年前期 自然と生命の理 演習

2年前期には基礎医学の幹となる3科目(生理学、解剖・組織学、生化学)を学びます。授業形態には座学、演習、実習があり、これらを通して知識と知見を結びつけることができます。中でも生理学の演習は、慈恵ならではの個性あふれた授業の1つであり、基礎医学を学び始めた医学生が大きく成長できる授業だと思います。生理学の演習は8人で1グループとなり、そこにチューターの先生が1人ついてくださります。まず、事前に課題が与えられ、講義や教科書を見ながら分かる範囲で十分予習します。当日は生徒主体で司会や書記を務めつつ、予習してきた課題についてディスカッションを行い、理解を深めます。担当の先生からは議論の途中でヒントを頂いたり、最後に解説をして頂きます。生理学演習の魅力は、グループディスカッション能力と、物理現象を自分なりに噛み砕いて論理的に説明する能力を身に付けられることだと思います。演習中に驚いたのは、8人それぞれ全く別の着眼点を持っていたことです。自分の意見を大勢に伝えるのは勇気が要りますが、普段は発言するのが得意でない人も、本演習では皆が目を輝かせて議論に参加していたことをよく記憶しています。話し合いが進むにつれ、1人で予習していた時には湧いてこなかった疑問も浮かび、生理学の理解も深まりました。グループ学習の醍醐味を味わうことのできる演習だと思います。また、生理学演習で与えられる課題には、物理現象を身近な現象に例えて説明するものが度々ありました。具体的には、電流を自動改札を通る人の流れに例えたり、電気エネルギーをバネに結ばれた犬が走る場面になぞらえて説明しました。中学生など全く物理知識がない人に向けて説明してください、と求められることもありました。物理現象を噛み砕いて説明するには深い理解を必要とするため、非常に難しく苦労しましたが、将来医師になって患者さんに分かりやすく病気を説明するための第一歩だとも感じました。

②2年後期 組織学実習  

2年後期の主な実習は形態系科目(解剖、組織)です。座学の基礎医学も各論となり、循環器、呼吸器、など臓器別の勉強が進んで医学生らしくなってきます。私が2年後期で最も印象に残っているのは組織学実習です。後期の組織学実習では、各臓器別に詳しく学びます。3か月に及ぶ実習が終了する際には、ツァイガー試験といって、顕微鏡の針(ツァイガー)で目的の細胞を時間内に指し示す試験が行われます。そのため、組織構造を十分に理解し、初めてみたプレパラートであっても自分の力で細胞や組織を鑑別する能力が求められます。 組織学実習の魅力は、何といっても先生方との距離が近く、顕微鏡を覗いて分からないことがあれば丁寧に教えてくださることです。 私が組織学実習で最も面白く奥深いと思ったのは、細胞の形態から機能を想像できることです。例えば上皮細胞1つとっても摩擦に強い上皮、伸び縮みに対応できる上皮、エネルギーを産生して活発に仕事をする上皮などがあります。また、核や核小体、細胞質の大きさを観察することで、細胞分裂が盛んなのか、タンパク質合成が盛んなのか、など細胞の個性も知ることができます。このように、細胞形態や組織構造を観察することで、どのような機能を持つのか、ストーリーが見えてきます。組織学は覚えることも多く、標本1枚1枚見える組織が違うのが難しいところですが、単なる教科書との絵合わせや丸暗記で済ませず機能も併せて考えることは非常に奥深く、魅了されました。組織学実習が非常に面白かったので、3年次の研究室配属では病理学講座を選択し、脳腫瘍の組織を観察したりもしました。

このように、慈恵医大には個性ある授業がたくさんあり、先生方との距離が近いのが非常に魅力的だと思います。

(医学科3年 M.T.)※2023年1月掲載