医学研究を始めるきっかけ
(写真:実験で使うクリーンベンチという装置です。埃や微生物の混入を避けながら細胞培養を行ったりするのに使います)
受験生の皆さん、はじめまして。慈恵に興味を持っていただき、そしてこのページに足を運んでいただきありがとうございます。この記事にアクセスしている方は少なからず研究に興味がある方だと思うので、筆者がなぜ医学研究を始めたのか、現在どのような研究をしているのかについて話していこうと思います。
僕が研究を始めたきっかけは一言で言ってしまえば「好奇心」です。僕は本記事執筆時医学科3年なのですが、この代は入学とともにコロナ禍が始まり、初年度は対面授業や部活動も満足にできず、暇を持て余している状況でした。そんな時に、慈恵では医学研究を学生のうちからできるということを知って、どうせ暇だし一度研究室に足を運んでみようということになりました。慈恵にはいくつも研究室があるのですが、そのうちの一つの研究室が気にいって1年のうちから所属させてもらい現在に至る、という感じです。 こう書くと意識高い医学生の話のように見えますが、実際はそんなことありません。「こういう研究がしてみたい!」というような考えがあったわけでもなく、論文や医学雑誌などもほとんど読んだことがない全くの無知の状態で、ただ「研究っていうものをやってみたい」という思いだけで研究を始めました。 要するに何が言いたいのかというと、「医学研究」という一見気難しそうなものも、想像よりもはるかにそのハードルは低いのだ、ということです。「よくわかんないけど、研究っていうものをやってみたい」という僕のような考えで始めても良いのではないかと今では思います(もちろん、やりたいことが明確になっている方が良いとは思うのですが)。そして、慈恵の先生方はそういった学生も快く受け入れてくれます。 この記事を読んでいる方の多くも卒業後は臨床に進むと思います(もちろん研究の道に進むこともできます)。つまり、研究そのものに触れる機会は、そこまで多くあるわけではありません。自由に様々な活動ができる学生のうちだからこそチャレンジできることでもあります。職業として研究をするわけではないので、すぐに結果を求められることもありません。先生と相談しながら、自分なりに研究を進めていくことができます。
僕の研究の話になりますが、テーマは先生に提案してもらったものを進めています。僕のテーマは大雑把に言えば心臓周辺の血管についてです。人間でもラットでも、胎児と大人では血液の循環の仕方が異なります。胎児の肺にはあまり血液が流れていないことを知っている方もいるのではないでしょうか。胎児が母親の体から出て外の世界に触れると、血液の循環の仕方が大きく変わります。すると胎児のときにはあまり血液が流れていなかった血管に血液が大量に流れ始めたり、逆に胎児のときは流れていたのに、産まれた後は全く流れなくなったり、ということが特に心臓周辺の血管で起きます。この大きな変化に耐えるためにも血管も少しずつ「準備」しているわけです。その「準備」の一部分に焦点を当てているのが今の僕の研究です。
正直、研究を始めたころは実験の作業も下手で、段取りが悪く時間がかかったり、嫌だなと思うことも多かったです。それでも、結果が少しでも出ると研究の面白さが少しわかったような気がします。 この記事をここまで読んでくだった方の中に、医学研究に少しでも興味がある方はぜひ研究室まで一度足を運んでみてください。きっと自分に合う研究室が慈恵にはあります。僕もまだまだ研究をする者としては未熟者ですが、もしご縁がありましたら一緒に研究を楽しみましょう。慈恵でお会いできる日を楽しみにしています。
(医学科3年 堀内理人)※2023年1月掲載