どうなるんじゃー

私達は細菌学講座に所属しています。将来臨床医として疑問ができた時に自分でその疑問にアプローチできる医師になりたいと思い、研究室に入ることを考えました。 細菌学講座では研究内容も面白い上に、先生との距離が近く、沢山のことを教えてくださるので選びました。3年生になる前の春休みから研究室に入り、今は実習の後やzoom授業のみの日など研究室に通い実験をしています。学会での発表も3回ほど行いました。

大腸菌などの微生物の集合体をバイオフィルムといいます。バイオフィルムは人工関節やカテーテルにできたりすることで感染症を引き起こし、さらに抗菌薬も効かないため大きな問題となっております。さらに最近ではパーキンソン病やアルツハイマー病との関連も報告されています。そこで私たちは大腸菌がバイオフィルムを作る際に重要な役割を果たす細胞外アミロイドのCurliについて研究しています。

私たちの研究内容について詳しく説明します。受験生の皆さんにとっては習っていないことばかりで難しいと思いますが興味があれば読んでみて下さい。 Curliの主成分であるCsgAというタンパク質が細胞質内で変性したり凝集するのを防ぐのが分子シャペロンのDnaKです。この分子シャペロンDnaKの反応を助けるのがJDP(Jドメインタンパク)とヌクレオチド交換因子のGrpEです、JDPとcurliの産生の関係はわかっていましたが、GrpEがCurliの産生に必須であるかどうかはわかりませんでした。GrpEは大腸菌の生育に必須であるのでCurliの産生にも必要なのであろうと予想していました。そこで私達は大腸菌からGrpEを欠損させた株とその欠損株に改めてgrpEを発現させたものでそれぞれCurliを産生するか調べて見たところ、予想外なことにどちらでもCurliが産生されませんでした。grpE欠損株の何らかの変異が存在する可能性が考えられたのでPCRによってCurliの産生に関わる遺伝子の欠損を確認しました。その結果、grpE欠損株ではcsgABDEFGの遺伝子を欠損していることが判明しました。そこで、CsgABDEFGを共発現するプラスミドを、grpE欠損株に導入したところ、Curliの産生が回復しました。さらに、DnaKとGrpEの相互作用がCurliの産生には必須ではないことを確認するために、GrpEと相互作用できないDnaK変異体をdnaK欠損株でプラスミドから発現したところCurliの産生は回復しました。このことからCurliの産生にGrpEは必須ではないことが明らかになりました。従来GrpEはDnaKの機能において必須であると考えられてきましたが、私たちの研究によりGrpEの助けを借りない DnaKの生理機能を新たに見出すことができました。

図2 - Mayu.JPG

研究の内容は授業で習ったことの応用であったり、そもそも取り扱わない範囲のことも出てくるので難しいです。私たちも最初はたくさんの遺伝子の名前が暗号にみえました。しかし、学んだ知識を使って自分たちで結果を考察したり、「こんな実験をしてみたらいいかもしれない!」と考えるのがとても楽しいです。私たちが教わっている杉本先生はいつも温かく私たちの実験や議論をサポートしてくださります。また学会では医学部以外の方との交流もあり、すごく良い刺激を受けています。

私たちの研究が面白そうだなって思った方、研究難しそうだけどちょっとやってみたいかもって思った方、ぜひ慈恵に入って研究室に訪ねてみて下さい。

(医学科3年 奈良萌子・大瀧琴音)※2023年1月掲載