2年後期基礎医学Ⅱ「神経系」の魅力

神経系は2年後期のユニット基礎医科学Ⅱの中でも最もコマ数が多い科目です。 今回は、この最もコマ数が多く、最も大変そうな講義こそが私の個人的お気に入りNo.1科目である所以を解説していきたいと思います。  

さて、突然ではありますが、神経系、と聞いてみなさんは何を連想するでしょうか。脳でしょうか?神経線維でしょうか?シナプスや神経伝達物質でしょうか?はたまた痛みや触覚といった感覚でしょうか? どれも正解です。これらは神経系を説明する際の視点が異なっているだけなのです。この神経系の講義では、末梢神経系、中枢神経系からはじまり、小脳、脳幹、大脳基底核、神経生理、疼痛、シナプス可塑性、と幅広く包括的に神経系を学ぶことになっています。  

それぞれの講義では、肉眼的視点、ミクロ的視点、マクロ的視点で神経系が語られていきます。肉眼的視点としては、脳のシワ(脳溝といいます)がどう刻まれているか、皆さんお馴染みの海馬がどのあたりに位置するのか、脳のどのあたりが聴覚に関わるかなど、解剖学的構造と機能を結びつけて覚えていきます。マクロ的視点では、脳の組織像から神経線維がどのような走行をするかを学びます。ミクロ的視点では、ニューロンの伝導や伝達(つまりどう信号が伝わるか)機構とそれに関わるチャネルや神経伝達物質について学びます。この幅広さと、さまざまな視点から神経系を学ぶことができるところが私のお気に入りポイントでもあります。  

また、各講義では前述したような神経系の構造や機能と共に、障害部位に対応した症状や疾患についても学ぶことができます。例えば、大脳基底核の障害では、無動、安静時振戦、筋トーヌス(筋緊張)の異常などの錐体外路症状というのが見られる、小脳の障害では、企図振戦などの運動失調が生じるというように具体的な名称を学習します。このような症状や疾患名が多く取り上げられる神経系の講義は、ようやく自身が医学生だということを実感させてくれました。  

この最大コマ数を誇る神経系の講義では多くの知識をインプットしますが、神経系は未知の部分が多い分野でもあります。講義では神経系の有名な教科書として知られる「カンデル神経科学」を参考文献として使われる先生方が多く、最新の情報を知ることができます。実は、このカンデル神経科学の日本語訳をされたうちの一人である加藤総夫先生もこの講義を担当されているのです。  

さて最後に、神経系が私たちの体において担う役割が何であるか考えてみてください。 私は、例えるならば、体の司令塔のようなものだと思います。私たちの感情や行動が神経系によって規定されるということは、神経系を知ることが私たちの感情や行動について知る鍵となると思うのです。また、同様に痛みのメカニズム、すなわち神経系を知ることが、将来医師として病に伴う痛みと闘う患者さんを理解することに繋がると思うのです。そんな第一歩を踏み出せるのがこの神経系の授業なのです。

(医学科3年 奥田りな)※2023年1月掲載