人生の先輩たちに囲まれて学べる大学
英国のタイムズが提供する世界大学ランキングにおいて、ある項目で慈恵が2020年に世界一になっています。それは、教員数と学生数の比です(詳細はこちら)。教員1人あたり学生が0.9人、本学は学生数に比較して教員数が世界一多い大学なのです。そのカラクリは、附属病院で働く医師の多くが教員として学生教育に関わっているからです。
大学というと、大講堂で教授が200人以上の学生に講義をしている姿をイメージするかもしれません。学費収入で教員を雇用する大学であれば、教員1人あたりの学生数が多くなるのは致し方ありません。しかし本学では、附属病院の医療収入から1学生あたり年間500万円以上を教育経費に充てることで、1人の医学生を育てるのに多くの教員がかかわることができる環境を整えています。
4年生から始まる臨床実習、とりわけ診療参加型臨床実習では、医学生は各医療チームに1人ずつ加わり、1ヶ月間そのチームの一員として振る舞い、現場で臨床医学を学びます。チームの医師は教員であり、彼らの行動や言動から学生は多くのことを学びますが、教員が多ければ、「自分もあのような素晴らしい人になりたい」と思えるロールモデルに遭遇する機会も多くなります。
教員から教えてもらうという受動的な学修態度を、自ら学ぶという能動的な学修態度へ変換することは、「アクティブラーニング」という言葉をよく耳にするように、今はどこの教育機関でもトレンドになっています。しかし、本当に能動的な学修態度が身についたかどうかを測るのは簡単ではありません。
臨床実習では、現場で遭遇した出来事の中から、自分の学修課題を見出し、自ら問い、自ら学び、教科書で学んだ知識を知見に変えていきます。チームの中でのやりとり一つ一つが自分へのフィードバックとなり、日々の実習の中で能動的な自己主導型学修習慣を身についたかどうかを実感できる、そんな学修環境がここにあるのです。慈恵のカリキュラムは、自ら問い、自ら学ぶという自己主導型学修習慣を身につけながらも、共用試験や医師国家試験のような全国共通の試験にも対応できるように、低学年から段階的に適切な学修態度を身につけられるように工夫されています。
そろそろ大学選びも終盤です。「いい大学に入れば、いい企業に就職できて、一生安定した生活ができる時代」には、企業も卒業大学が新入社員選考の重要項目でしたから、予備校の入学偏差値ランキングはとても重要な指標だったかもしれません。しかしながら、グローバル化により、大学を卒業したばかりの人にも即戦力が求められる時代になり、大学での学びが重要視され、国際的に大学の質が比較されるような時代になりました。大学入学偏差値、そんな「昭和の呪縛」に囚われず、どのような環境でなにが学べるかという視点で、大学選びをしてみませんか?
(解剖学講座 教授 岡部正隆、あるいは、コロナ禍で学生と共に63回の実習に参加したカリキュラム委員長)