学生の医学教育への積極的参画 〜学生と教員と協働で創り、進化を続ける教育プログラムを目指して〜
本学の特徴の一つとして、2001年というかなり早い段階から、学生が自身の受けているカリキュラムについて積極的に意見を述べる機会を設け、学生と教員との協働作業でカリキュラムを創り上げて来たという歴史があります。各学年数名からなる学生ワーキンググループが、年に2回「学生による教員・教育評価アンケート」を実施しますが、そこではBest Teacherと好ましくない教員像、各ユニットの評価、試験や実習評価についての意見、自己学習の状況について調査します。今年は新型コロナウイルスの感染によって大きな変化がありましたので、遠隔授業を含めての調査も行いました。アンケートを教育改善につなげるためには、アンケートで述べられた学生の意見が確かに教育に反映されているという実感が伴うことが必要であるという観点から、本学ではアンケート結果を基に、学生と教学委員との検討会議が開かれます。次年度カリキュラム作成の際には、そこで指摘された課題を改善すべく検討が行われます。 さらには、個人的な相談をも含めて、本学の教員は様々な場面で学生の意見に耳を傾けるという伝統があり、教育現場での微調整はしばしば行われています。
カリキュラムアンケートの他に、入学時アンケート、卒業時アンケートなども実施し、教育プログラムについて多面的に評価しています。 今年の入学時アンケートでは回答77名中、本学に入学して、「非常に満足」27名、「まあ満足」46名、「やや不満」3名、「非常に不満」1名、という結果でした。満足している理由として、「大学の雰囲気が良い」「教員の対応が丁寧」「最高の友人に恵まれている」などが挙げられています。不満な理由としては、部活動ができないこと、経済的なこと、第一志望では無かったなどが述べられていました。入学前後の本学のイメージの変化としては、「真面目で硬いイメージ」が「安心できる居心地の良い空間」に変化した学生が多いようでした。総じて、「アットホーム」「自由」「慈恵愛」などは本学のイメージとして捉えられているようです。 卒業時アンケートでは、「学生が主体的に学ぶことができる」「低学年からの充実した実習」「熱心な教育」「厚い教員のサポート」「総合試験で試験回数が少ない」「多様なグループ学修」「出席制度がない」などで良い評価を受けていますが、一方では、特定の科目は毎年改善点を指摘されるなどの問題を残しています。「フィードバックをもっと充実して欲しい」「レポート作成やプレゼンの能力をもっと身につけたい」「教養科目と専門科目の関連」なども意見が挙がっており、カリキュラムに確実に反映されています。
大学教育の国際的通用性が求められる中で、大学教育の質が本当に保たれているのか、その大学の卒業生は本当に医師として働けるだけの能力を備えているのか、それを保証する責任は各医学部にあるという考え方が広まっています。卒業時に学生が示すことのできる成果(アウトカム)を指標として大学教育の質の評価が行われるわけですが、国家試験をはじめとした目に見えるわかりやすい評価(直接評価と言います)の他に、学生自身がどのくらいできていると認識しているかの評価(間接評価と言います)も大切な評価の観点であり、アンケートは間接評価として重要なものの1つとして考えられています。
本学は、学生からのフィードバック(アンケートなど)を組織的に回収、分析して教育改善に資することを実践しており、それはすなわち、学生も大学を構成する責任ある一員であると尊重していることの証でもあります。
(教育センター 教授 中村真理子)