コロナ禍の受験生へのメッセージ〜自分自身の応援のために〜

学長の松藤千弥です。東京慈恵会医科大学 医学部 医学科の受験生応援サイトにようこそお越しくださいました。

社会がCOVID-19の脅威に直面する中、皆さんは夢をかなえるために努力を重ねています。通常の入学試験への備えに加えて、ウイルスに感染しないように細心の注意を払いながら、本当に入学試験が実施されるのだろうかという不安とも戦わなければならない皆さんは、本当に大変な状況の中にいると思います。

医療の現場も過酷さを増しています。特にCOVID-19患者を受け入れている医療機関の現場を担う医師、看護師、医療スタッフは、病気と自らの感染リスクの両方に対する長期戦を強いられています。一方で、今回の感染症の流行により、社会の人々は、いざというときに頼りになる医療者の存在、平時には気づかなかった医療インフラ、医学研究の大切さを思い知りました。当然、未来の医療者への期待も膨らみます。

そうは言っても、皆さんは困難な状況の中、困難な目標に向かっていかなければなりません。私は、医学を教える大学で皆さんの入学を心待ちにしている立場から、メッセージをお伝えしたいと思います。それは、自分自身からの応援と、今という時からの応援をもらうコツです。

自分自身から応援してもらうために、皆さんが困難な状況に苦しんだり、悩んだりすることが、決してマイナスではないことを知ってください。医療者になるためには、自分自身が苦しみ、悩んだ経験がとても大切であり、絶対に必要といえるほどなのです。それは医療が、病気に苦しみ、悩んでいるひとに対する真の共感を出発点として、そういうひとに寄り添っていく仕事だからです。何も医学部受験のときにそんな苦労をしなくてもと思うかもしれませんが、考えてみてください、医学部を受験するということ自体、かなり恵まれていることです。そして、すんなり合格して、すんなり医者になったら、皆さんはいつ苦しみ、悩むのでしょうか。私は入学してきた学生諸君に対して、苦労は買ってでも経験しろと言っています。苦しみ、悩む自分を応援して欲しいのです。

ふたつ目に、今という時は、皆さん自身が苦労して医療者への扉をこじ開けるのに最適なタイミングだと思うのです。COVID-19拡大は、皆さんや、皆さんの大切な人に直接関わる問題であり、皆さんもきっと関心を持って多くの情報に接したことでしょう。皆さんは今、医療が機能しなければ多くの命が失われること、医学が前進しなければこの状況は決して改善しないことを知っています。つまり今の状況は、医学の道をめざすひとの背中を強く押す、まさに皆さんへの応援そのものなのではないでしょうか。

終息しない病禍はありません。しかし、人類はまた別の病原体の脅威を受けるでしょう。そのとき、人生の一大イベントである大学受験をコロナ禍の中で迎えた皆さんが大活躍してくれると信じます。

(東京慈恵会医科大学 学長 松藤千弥)