MD-PhDコース:慈恵流の医学研究者を育てる贅沢な道
全国の医学部の中には研究医を育てる目的で、大学医学部在学中に大学院医学研究科の単位を取得するMD-PhDコースと呼ばれる教育プログラムを設置する大学があります。慈恵では、大学在学中に選択科目ユニット「医学研究」の単位を取得した卒業生が、大学院に進学した際に様々な優遇措置を得られる、慈恵独自のMD-PhDコースを設置しています。大学を卒業した後、直ちに大学院に進学する必要はなく、専門医を取得してからでも、MD-PhDコースに進学して研究医を目指すことができるのが、慈恵のMD-PhDコースの特徴です。
慈恵は、建学以来、ドイツ医学ではなく英国医学をベースとして医師の育成を行ってきたため、すべての基礎医学や臨床医学の分野の指導者を独自に育成し、後輩たちを指導する必要がありました。そのため、臨床医だけでなく多くの基礎医学分野の医学研究者も育ててきたのです。
在学中に医学研究の面白さに目覚めた慈恵の大学生は、選択科目であるユニット「医学研究」を履修し、放課後や休日、長期休暇を利用して学内の好きな研究室に入り浸って実験をし、大学生の頃から学会で発表するなど、医学研究者の卵としてそのキャリアをスタートします。この選択科目の単位を取得し卒業して医師となった卒業生は、慈恵の大学院に進学してMD-PhDコースを選択することができます。大学院に進学する前に、初期臨床研修や専門医修得コースなどでキャリアを積み、専門医資格を取得した後に、大学院に進学してMD-PhDコースを選択することもできます。
MD-PhDコースを選択すると、大学院修業年限が1年短縮されて3年間になる他、大学院授業料の免除、研究費の助成、大学院在学中の奨学金の貸与など、様々なインセンティブを得ることができます。この奨学金も、大学院修了後に、一定期間、慈恵の教員として教育研究活動に従事すれば、返済が免除されます。臨床医として働きながら医学研究者としてもアカデミックに活躍したい人からすれば、慈恵のMD-PhDコースはこの上なく至れり尽くせりの教育プログラムと言えます。
慈恵では医学研究だけでなく様々なライフサイエンスや医工学の研究が盛んに行われています。その特徴として、研究テーマが上司から与えられるものばかりでなく、日常の臨床業務の中で気づいた「不思議」について、謎解きのために自ら立ち上げる研究が多くあることが挙げられます。自分の「不思議」を解くために自ら新しい研究を立ち上げることは、その時代のトレンドな研究を追随することなく、だれもやっていなかったニッチな研究に発展することは容易に想像できます。上司がテーマを与える研究をトップダウン型の研究というならば、慈恵の研究の多くは、自分で立ち上げるボトムアップ型の研究といえるでしょう。慈恵には、自らの知的好奇心を原動力として展開する医学研究者を育てる風土があるのです。
大学生のうちから、知の探求に夢中になっている先輩医師たちとともに、世界でだれもその存在に気づいていない未知の世界を追いかけるという夢のような時間を体験できます。是非、皆さんも世界で自分しか知らない知の世界を、慈恵で展開してみませんか?
(トップ写真:MD-PhDコースに進学した産婦人科医の小林律子医師。写真は医学科4年生のときの学会発表での姿。この研究は2016年に英国の科学誌Scientific reportsに発表された)
(解剖学講座 教授 岡部正隆、あるいは医師になってから10年もショウジョウバエの研究をやっていた解剖学者)